― BLUE ―
「これ落としたらジュース奢ることな」
あたしのおでこの上へ、なんとも器用にライターらしきものを乗せた杉本。
一瞬キスされるのではないかと思った自分が情けない。
「もしかしてキスされるとでも思った?」
悔しいけど当たってる。
「うん、思った」
だから素直にそういった。
「——じゃ、してみる?」
「どっちでも」
「やっぱおまえ、なんかへんな奴だよな」
おでこの上にライターが乗っているので見えなかったけど、杉本が笑っているのがわかる。
そして、その後すぐ——。すっと影ができて空が見えなくなったと思ったら、唇に触れるだけの軽いキスを降らせてきた杉本。
なにが起こったのか一瞬わからなかった。
だけどなぜか取り乱すこともなかった。
「びっくりしねえの?」
「———ちょっとだけ」
「つまんね」
むしろあまりにもあっさりあたしの日常へ入り込んできたほうに驚いた。
ほんと、それだけだった。