― BLUE ―
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それから、しばらくして追試が開始された。
少し不安はあったけれど、なんとかあたしにも夏休みがやってきそうだ。
もちろんあたしと違い、もともと優秀な杉本はらくらくと追試をこなしている。
夏休み、か…。
それは杉本と会えない日々になるわけで。
あたしを不安に——。それは違うな。
寂しくなる、ような? これも違う。
うーん…。
夏休み前、最後の屋上。とくに待ち合わせることもなく、そこへ向かったら杉本がいた。夏休みが始まると、もうこんな風に屋上で会うこともない。
「携帯?」
「おー、番号教えて」
なんだかモヤモヤしているあたしの気持ちをわかっているのか、だけどたくさん話をするわけでもないから考えていることなんてわからない。
けれど杉本がお互いの番号を知らないことについて指摘してきたので教えあう。
なんとなく“杉本”とは入力せずに“シン”と入力を済ませた。特に意味の持つ事ではない。
だけどその“シン”という文字が携帯のディスプレイに表示される日なんてあるのだろうか。
ぼんやり考える。
もしそんな日が来るなら、そのころには杉本のことを“シン”と呼んでいるのかな。
なんかそれぐらい、ちょっとありえないことのように感じてしまう。
「さんきゅ」
あたしの名前を杉本はなんて入力したのかな。
携帯へ入力を終えたあたしの目に、待ちうけ写真が飛び込んできた。
そこには遼汰とあたし。幸せそうに笑う、2人の写真。