― BLUE ―

人生初のアルバイト。

少しの緊張はあるものの、知らない世界へ飛び込むことは嫌いじゃない。高校に入ってから、どこかジメジメ湿った女をやっていたけれど心機一転リフレッシュ!

レンタル屋は通い慣れていたせいもあって、初めてするバイトのわりに気が楽だ。

ほとんどの場所も覚えているし、顔なじみの店員さんもちらほらいる。同じ仕事を選んでいるだけあって話も合うし、学校とは全然違う世界が広がっている。ちょっぴり刺激的な空間。

あたしにしては珍しくすんなり溶け込み、すぐ馴染んでしまった。

肝心の仕事内容のほうも1週間すれば一通りこなせるようになる。

ずっと鞄の奥深くにしまいこんでいた携帯は、あれからあたしの目の届くところに。杉本から連絡が入ることはない。

だけど、それもそのはずだと思う。あたし達は保健室でたまたま会っていただけ。屋上もその延長でしかなく、追試の日程発表のとき教室ではじめて喋った程度。朝に挨拶を交わすこともなかったし、またあしたとバイバイする仲でもない。

たまたま、そこにいただけなのだ。


「マコちゃんは彼氏とかいる?」

「いないよ」

「そうなんだ!俺も今フリーなんだよねー…ってか、おれ彼氏に立候補〜!」


一見そんな風に見えないのに喋ると軽い中嶋くん。いつも楽しい話で盛り上げてくれ、周りの雰囲気を明るくしてくれる。

他愛のない話で笑うこともよくあった。


「そういや今日は夏祭りじゃーん」

「あ〜、だからか。どおりで浴衣が多いわけだね」

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