― BLUE ―

店内を見回すと浴衣を着た女の子がやけに目立つ。近所の夏祭りは八月を過ぎてからなので、今日は花火も上がる大きいほうの祭りだ。

どの子も普段は着ることのない浴衣に袖を通しているためなのか、はしゃいでいるように見えた。

そんな彼女を嬉しそうに眺めている彼氏。

ああ、そういえば。
あたしも去年、初めて浴衣を着たんだった。

髪の毛をアップして、いつもより念入りにメイクして。

爪の先までも念入りに磨き上げては、ウキウキしながら何度も鏡の前で身なりのチェックをしていた。周りから見れば、きっとあたしもあんな風だったんだろうな。


「夏祭りなのに——、バイトってなんか虚しいね」


ひとつ先輩の由美さんの一声で、終わってからみんなで花火をすることになる。


「お!それいいねーー!」


中嶋くんはかなり乗り気だ。
実はあたしも、こういうイベントが好きだったりする。受験だった去年の夏は、そこまで盛大に遊ぶことができなかったけれど、それまで夏休みといったら毎日のように咲と遊んでいた。遼汰とつきあうようになってからは集まる人数も増えて、とにかく毎日が楽しくて仕方なかった。

ああ、あのころはよかったな。
と、黄昏ている場合ではない。

返却が溜まってきたので、それを抱えこむ。

新作コーナーは回転が早く、陳列棚の前で返却されるのをスタンバっているので人が溜まっていることが多いからここだけバタバタ忙しい。
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