― BLUE ―

そして、その日の花火は男3人と女3人という仕組まれたような人数。

気持ちが軽くなったからなのか本当に楽しめたし、久しぶりに大きな声で笑えた。

メンバーは全てバイト仲間だったけど、シフトの違いから4才年上の勇次さんとは初対面。聞くところ由美さんと勇次さんは、既に付き合っているらしい。みんなに発表するつもりだったとかで、見ていて微笑ましいぐらい仲がいい。

そして「夏休みだし、ちょっとぐらいはいいよね?」という流れで、お酒を少しだけ。これまで一滴も飲んだ経験がないのにチューハイを飲み干してしまったあたしは、なんだかふわふわしていた。

夏の夜風が色濃い緑の匂いを運んでくれて心地いい。


「さてっと。そろそろお開きにしましょうかね?」


花火も全て終了し、まったりと時間を過ごしていたあたしたち。時計をみれば10時を過ぎていた。

散らばった花火やゴミを集めつつ片づけをはじめていると、くいっと袖を引っ張られる。


「どうしたの?」

「家まで送るよ」


中嶋くんだ。


「あ、近いしーだいじょ〜ぶだよん♪」


お酒の威力なのか、間延びしたような喋りかたをしてしまった。


「そんな状態で帰ったら危ないし、ちょっと話があるから」


断る理由が見つからない。
素直にそれへ従うことにする。

だけど帰り道。


「まーじーーでーー」

「まじまじ超マジだよ」


なんだかあたしはかなり饒舌にぺらぺら喋ってる。だって中嶋くんと2人きりの状態が変に気まずい。

それは杉本と一緒にいるときには感じたことがない気まずさだ。あたしのトークはスカスカ空回りしているような気さえしてくる。

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