― BLUE ―

「なに、マコ? 今日はテンション低いの?」

「だって雨だし。なのに美耶の髪はサラサラで羨ましいなぁ」


自分の膨脹した髪の毛にブラシを通しながら、ため息交じりでそう言った。

髪を切ろうと何度も思うんだけれど、長い髪が好きだという遼汰のために伸ばしていた。振られたからといって切るのは、なんかちょっと嫌。

まるで遼汰の為に伸ばしてたみたいに思われそう。それじゃなくても失恋に大ダメージ受けてるとか思われそう。

なんか変なプライド。
だけどこれがプライドなのかも考えてみたらよくわからない。

なんだかんだと人の目が気になったり、振り回されたり。ドロドロした気分が振り切れていない自分にイラっとくる。

だってもうあれから1ヶ月。

涙は出ることもなくなったし遼汰を思い出すこともなくなった。

でもこういうことを考える自体、やっぱりまだ立ち直っていないんだろうとは思う。なんか湿っぽい女だ。


朝の出来事を美耶に話しながら教室を見渡してみる。晴れてる日は電気なんていらないぐらい明るい教室も、雨の日には時間を見失うほど薄暗い。

暗い教室にこの湿気。手触りがしっとりした机は雨の湿気でも吸っているのかな。


「そんなことがあったんだ? ん〜、シンも雨でイラついてたとかかな?」


そんなじめっとした雰囲気を吹き飛ばすかのように、美耶の明るいトーン。


「シン?」

「そうだよ。中学のときシンって呼ばれてた」


へえ。シンって名前なんだ。

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