― BLUE ―
「――マコッ」
「へ?」
「なに? ぼんやりして」
「あーなんかさ、杉本がいつあたしの苗字知ったのかなーって考えてた」
「あれじゃん? キレたからじゃない?」
「それか」
なるほど。
それに保健室で何度も名前を呼ばれていたし、とくに不思議なことでもないか。
そしてそれからは、杉本の中学のときの話で花が咲く。
なんでも杉本と由香先輩は、あたしたちが中一のころからのつきあいだそうだ。校内でも有名なふたりで、とても目立っていたとか。
だけど中一の杉本なんて想像できない。
つい最近まで小学生やってたころじゃん。
そして由香先輩が卒業した次の年、千草はバレンタインデーにチョコをあげたそうだ。
「てか、なんであたしらシンの話してんの?」
この空気を割って出たのは美耶だ。
ガールズトークは、さらに続く。
「いいじゃん楽しいし。この勢いで夏祭り一緒に行けないかな?」
「誰と?」
「シンに決まってるじゃん」
美耶と千草の会話。
あたしは、ひたすら後悔している。
由香先輩と別れたことを本人にきちんと確認しないまま言ってしまった。落ち込んでいた杉本を知っているのに。
「ねえマコ、シンを誘い出せる?」
「無理だよ」
「だよね」
そんなの無理に決まっている。
ああ、だけどどうしよう。
咲と疎遠になっているいま、せっかくできた友だちを失いたくない。期待に応えてあげたくなってしまう。とはいえ、ふたりが知らないことを口にしてしまった後悔が大きすぎる。