― BLUE ―
電話ではじめて杉本と話す。
いまだディスプレイにシンという着信は表示されたことはないけれど、なんてことはなかった。
案外普通になんでもない会話を続けるあたしたち。
だけど、ふたりで会っているときでも、ここまで話したことはないかも。
「あ、そういや杉本、夏祭りの日ってなにしてる? 空いてる?」
『予定ある』
「そっか」
一応打診はしてみた。
任務完了。
「あ、そうだ」
『今度はなに』
「話しちゃってごめんね。別れたこと」
『いつかバレるんだろうし、べつに』
「またいい人現れるよ」
『いま慰められてる?』
「あは」
『辻さんも頑張って』
「なにを?」
『携帯。未練タラタラのロック画面ですし」
そう言い終わった杉本が、小さく吹き出しているのがわかる。
「ムカつく」
『おたがいさまってことで。じゃ』
そこで電話は切れた。
ひとまず謝ることはできたし、夏祭りの打診もした。
だけど思いのほか、普通に話したな。
杉本は、まだ傷心中なんだね。