― BLUE ―
とはいえ、あたしはクラスの男子を苗字でしか呼ばない。遼汰のことだって最初は苗字で呼んでいた。呼び名が変わるときの、なんとも言い表せない緊張感をいまでも覚えている。
だから気軽に名前で呼べる美耶が羨ましくもあった。
しかし杉本の顔を思い出そうとすると、あの冷たい視線が頭にチラつく。どうして水をかけられたあたしが、あいつにあんな顔されるんだか。本当に意味がわからない。またムカついてきた。
「シンてさー、女子にすごく人気あんのよ」
「あいつが!?」
思わずムセそうになってしまった。
「だってシンて綺麗な顔してるじゃない?」
「そうだっけ?」
「あんたどこに目ついてんの?」
「どうせ美耶みたいに大きい目じゃないですよ」
「なにそれ」
「綺麗な顔ねえ」
「そう!それに他の男子みたいにギャーギャー騒いだりしないし。あ、それに頭もいいし!!みんな興味津々」