― BLUE ―
駅前の待ち合わせ場所につくと中嶋くんはもう既にそこにいた。
あたしに気づくと笑顔で手を振っている。
「ごめんね、かなり待った?」
「俺が来るの早すぎたんだ」
そういって笑う中嶋くん。
“約束”をして会うと言うことは、きっとこういう事なんだ。
約束された時間に約束された場所で『待ち合わせ』をする。ふとあたしはそんな当たり前で、どうでもいい事を考えていた。
そして着ている服を“かわいいね”と中嶋くんはいう。
この日のために気合いを入れて選んだ服ではなく、髪の毛を巻いてきたわけでもないのに。
こんなことなら、やっぱりもう少し、きちんとおしゃれをしてくればよかったかな。少し、胸が痛んだ。
そんなこんなでも選んだ映画は評判どおり面白く。観た後の会話は思いのほか弾む。
「——なにこれ、やば」
「俺、原作も読んだけどよくできてた」
「でも、あのラストないよね」
「続編作る気満々って感じ?」
「レンタルって、いつ頃出るかな?」
「評判いいしまだまだ先かなー。出たら俺、職権乱用で借りようっと」
映画の話も散々盛り上がったけれど、帰り道ではほかにもたくさん話をした。
中嶋くんの弟の話。学校の話、親友の話、好きな音楽や———…