― BLUE ―

「だるいね」

「暑いしね」


どこの学校だと思うんだけれど初日の今日は始業式。

長期休み明け恒例のことなんだけれど、内容を憶えているほどのイベント的な事は全くと言っていいほどなにもない。

部活かなにかで入賞したりした人たちが表彰されたり、産休に入った先生の変りの先生が紹介されたりする。

久しぶりに集まった生徒達が、そんなの大人しく聞くはずもなく。何度も"静かにしなさい"と声がかかるので、なかなか式が進まないうえに、暑さも加わってイラついてしまう。

退屈しのぎで少し周りを見回してみれば、あくびをし終えた杉本と目があった。

すると杉本は、なぜか少し顔をしかめてから片方の眉毛を少し上げる。それからふいっと視線を逸らせ、小さく笑った。


「……」


あとで話しに行こう。かな。

なんとなくだけれど、ふたりだけしか知らない空間が生まれたような気がした。

そして始業式を終え、生徒達がバラバラと教室に戻るなか杉本を探す。みんなより頭ひとつ背が高い杉本は生徒達でごったがえしているなかでも、すぐに見つかった。

だけど珍しく数人と集まって、わいわい雑談しながら歩いている。

どうしよう。
喋りかけにくいな。

この場所からでは何を話しているのかわからないけれど、こそこそ頭を寄せ合っては笑い声が広がっていた。


「あ……」


こっち向いた。

と、思ったら杉本が輪の中からひょこっと抜け出す。そして前髪を指で触りながら、ゆっくりとあたしの方へ歩いて来た。

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