― BLUE ―
「それで、辻さんは中嶋のこと…、どう思ってるのかなって思って」
「ごめん。なんか、よくわからないんだけど?」
だってこの状況が、ホントに理解できない。
だいたいあたしは中嶋くんに彼女がいたことなんか知らないし。
そこに杉本の名前までも出てきて。美耶にすらなにも話していないのに、こんな見ず知らずの人に対して話さなくちゃならない理由もない。
「なんかさ。こういっちゃなんだけど、そもそもあたしの気持ちって、あんま関係なくない?」
「でも」
「ごめんね」
そして、その場から離れた。
なんだか聖域をバタバタ土足で踏み込まれている気分。
はあ…。
イラだちながらも考えてみる。
あの真ん中の子は、あたしと同じような経験をしていることはわかる。
彼氏に突然切り出される"他に好きな人ができた"という別れをあたしも経験しているのだ。気持ちはわかる。
だけど一度そうなってしまったものは、もうどうすることもできないと思う。あたしにどうして欲しいんだろう。
たとえばあたしが"中嶋くんのことはなんとも思っていない"といったら、納得して帰ってくれたのだろうか。
なんかバカバカしい。いくら考えたって、あたしに利益ある答えなんてないような気がする。
「つかれた……」
新学期早々なんなんだ。
ため息も出るって話。
あたしの足はそのまま無意識に、屋上へと向かっていた。