彼女とボクと出会いの季節
懐かしい彼の笑顔と、目の前の彼女の笑顔が重なり合って、そして彼の顔が段々と小さくなって消えていく。
「私と、家族になりましょう」
桜の花が咲き乱れる頃、ボクは彼と約束した。
“いい子でな”
その約束を守り続けて、ボクは彼女に出会った。
滑らかな手で、優しくボクを撫でてくれる彼女に、思い切って近づいてみる。
クンクンと鼻を鳴らすと、ほっそりとした手でボクを抱き上げて、彼女はギュッと抱きしめてくれた。
お花みたいな、甘くて柔らかい匂いがする。
嗅ぎなれた石鹸の香りとは全然違うけれど、でも嫌いじゃない。
これから、石鹸と同じくらい好きになれそうな香り。
早速甘えるようにグリグリと顔を押し付けると、彼女は嬉しそうに笑って、ボクを抱いたままダンボールを抱えて歩き出す。