彼女とボクと出会いの季節
好き勝手な会話を繰り広げた女の子達は、あっという間にボクへの興味を失って、駅前にオープンしたクレープ屋さんの話や、隣のクラスの男の子の話何かに花を咲かせながら去って行った。
こうしてボクの前に立ち止まった人達は、みんながみんな同じような会話を繰り広げて、そして最後にはボクを残して何事もなかったかのように去って行く。
でも、それで全然構わない。
ボクが待っているのは彼であって、他の誰でもないから。
いつか迎えに来てくれた彼が、約束を守っていい子にしていたボクを見て、いつもみたいに笑ってくれたらそれでいい。
ゴツゴツした大きな手で少し乱暴に頭を撫でて、石鹸の香りがする腕で抱きしめてくれたら、ボクはそれで満足だ。
彼と約束を交わした日には満開だった花が、徐々に散り始めて、今では葉っぱの方が多くなってしまっている。
彼がダンボールに入れてくれた水を飲んで、ご飯を食べる。
時々通りがかる人達が置いていってくれる食料も、ありがたく頂く。
そうやって命を繋いで、ボクは今日も彼を待つ。
ダンボールの中に綺麗にお座りをして、彼が去っていった方を見据え、ただ一人を待ち続けている。