彼女とボクと出会いの季節
「わーんこさん」
そんなボクの視界の隅で、柔らかい声と一緒に、ふわっと布が揺れた。
また、彼女だ。
「お隣いいですか?」
ふわりと長いスカートの裾を風にはためかせて、彼女は微笑む。
ボクは、ふいっと顔を背けた。
彼女だけが、他の誰とも違う。
彼と約束を交わしたあの日から、色んな人達がボクの前で立ち止まり、そして去って行く。
でも彼女だけは、毎日のようにボクの前に現れて、柔らかい声で話しかけ、微笑む。
彼女に気を許してはいけない。
ボクには彼がいる。
いつかきっと、迎えに来てくれる人がいる。
だから他には、何もいらない。
「今日もいいお天気ですね。花の方はすっかり散ってしまいましたけど、そうなると今度は、道路に敷き詰められたピンクの絨毯が見頃になりますね」