彼女とボクと出会いの季節
スカートが汚れることも構わずに、当たり前のようにボクの隣に腰を下ろして、彼女は一旦頭上の木を見上げ、それから目の前の道に視線を移す。
ボクには色が見えないから、どんな風に綺麗なのかはさっぱりわからないけれど、時折風が吹くと一斉に何かが舞い上がるのは知っている。
彼も散歩中にその光景を目にすると、足を止めて“綺麗だな……”と呟いていた。
「春はピンクの桜、夏は緑の葉っぱ、秋は紅く色づいた葉で、冬は枝に降り積もった白い雪。この世界には、年中綺麗なものが溢れていますね」
枝葉の隙間から差し込む日差しに照らされて、彼女が嬉しそうに笑う。
「昼間はお日様がポカポカで気持ちいいですし、夜は優しい月の光りに包まれて安心します。どの季節も、どの時間も、この世界はとても綺麗です」
どこまでも高い所を見上げ続ける彼女をそうっと伺うように見つめていると、タイミングよく視線を下げた彼女と目が合ってしまった。
「わんこさんも、そう思いませんか?」
彼女が、ボクを見て嬉しそうに笑う。
その笑顔が、いつだって楽しそうに笑ってボクを撫でてくれていた彼の笑顔と重なった。