彼女とボクと出会いの季節
気を許してはいけない、ボクには彼がいる。
いつかきっと迎えに来てくれる……彼がいる。
「少しだけ、撫でさせてもらってもいいですか?」
無遠慮に手を伸ばす事なく、彼女はボクに優しく尋ねる。
いつだって彼女は、ボクに対する態度が他の誰とも違った。
少しだけ迷った末に、おずおずと彼女に向かって頭を下げる。
「ありがとうございます」
どこまでも丁寧にそう言って、彼女はボクの頭にそっと触れる。
大きくてゴツゴツしていた彼の手とは違って、彼女の手はほっそりとしていてとても滑らかだ。
撫で方も、少しだけ乱暴に、かき回すように全力で撫でる彼とは違って、彼女はふんわりと優しく撫でる。
彼とは何もかもが違うのに、なぜだろう……どうしてか、二人の姿が重なり合う。
「わんこさんは、寂しくないですか?」
唐突に、彼女はそう言った。
優しくボクに触れながら、彼女は真っすぐにボクの目を覗き込む。