カボチャ男とハロウィン
「まだ一緒にいられるんだって思ったら、嬉しくなったんだよ。純哉のこと独り占め出来るんだなって思って」
「っ、」
私の手を包み込むしっかりとした純哉の手が、まるで驚いたようにぴくりと動いた。
どうしたんだろうと思ってまじまじと純哉を見てみると、ぱちぱちと瞬きしてから繋いでいない方の手で純哉は自分の顔を覆ってしまう。
はあっ、とくぐもった深いため息が聞こえてて、今度は私が瞬きをする番だった。
「えっ、もしかして私、変なこと言った?」
ついつい調子に乗って思ってることを打ち明けちゃったけど、もしかしてまずかったかな。
夕飯のあとにケーキやこのお菓子を一緒に食べるなら、今日は純哉と長く一緒にいられる。それが嬉しくて言ったんだけど……。
ため息をつかれる理由って何だろうと考えながら、言い様のない不安が足元から迫ってくる。
だけど、不安に浸食されてしまう一歩手前。
いつしか俯いてしまった頭に柔く重みが乗せられた。頭を撫でた大きな手は、次に頬を包むように触れてくる。
「違うんだ。千菜ちゃんは変なこと言ってないよ。むしろ……」
「むしろ?」
途中で言葉を止めた純哉を見遣る。
その顔は熱でもあるんじゃないかと思えるぐらい赤く染まっていて、心配と驚きがない交ぜになって固まってしまった。
そんな私を純哉は繋いだままの手を引いて引き寄せると、片腕で抱き締めてきた。まるでそうすることが当たり前のように、私たちの身体はぴったりとお互いに密着する。
「千菜ちゃんが可愛すぎて困る」
耳のすぐ横で、純哉がくすぐるような声でそう言った。
可愛いと思ってもらえるようなことをした自覚がないから戸惑うものの、唐突に届いた声が甘く響いてくるので無性にどきどきしてしまう。