カボチャ男とハロウィン


今日の夕飯、何だろうな……。

ずっと頭の中に居座っているアイツの存在を無理矢理打ち消すように、そんなことをぼんやり考えながら自室のドアノブを握る。

そして開いたドアの先に――異質な存在が、立っていた。


「おかえりー、千菜ちゃん」


寝具やカーテンなどの色がライトブルーで統一されている見慣れた自分の部屋の真ん中に、明らかに異色なソイツがいた。

……なんか、カボチャのお面を被った変な男が。


おそらく画用紙っぽい紙で作られているオレンジに近い黄色のカボチャは、目と鼻を象るように三角に切り抜かれて、口も不敵な笑みを浮かべているみたいに切り抜かれている。

いわゆるジャック・オー・ランタンを模しているその手作りらしきお面を顔に装着しているソイツは、私と同じ高校の制服を着ていた。おまけによく知る声で私の名前を呼ぶものだから、嫌でも正体が知り合いの男だということが分かる。

ドアノブを握ったまま部屋の入り口で固まっている私の気持ちなんてつゆ知らずに、ソイツは「ハッピーハロウィン!」と謎に万歳をしながら声高々に言った。

一人盛り上がった様子でそう言われても……まったくもって、意味が分からない。

言われた言葉の意味ではなく、このカボチャ男の意図が。


「……」


万歳状態で固まり私の反応を窺うように小首を傾げるカボチャ男と数秒見つめあったあと、私は何も見なかったことにしようとさっき開いたばかりのドアを平然と閉じた。


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