カボチャ男とハロウィン
「ちょっと千菜ちゃん!! なんで閉めんの!?」
だけどドアが完全に閉まる直前にカボチャ男がドアの隙間に身体を滑り込ませてきて、コイツを中に閉じ込めようとしていた私の密かな企みはあえなく阻止されてしまう。
間近で対面したカボチャ男は、私の反応が想定外だと言うように焦りを声に滲ませていた。
私よりも高い位置にある三角の目の切り抜きの奥には、よく知っている綺麗なぱっちり目が狼狽えるように揺れている様が見える。
私はカボチャ男の言葉には答えずに、あくまでも冷静を装って淡々と言った。
「……なんで、純哉がここにいるの? あの子たちと、ハロウィンイベントに行ったんじゃないの?」
ハロウィンである今日の放課後、純哉はクラスメートの派手めな女の子たちに街中で開催されるハロウィンイベントに一緒に行こうと誘われていた。
普段から純哉はクラス内でも目立つグループにいて、その女の子たちもいつも一緒に行動している子たちだった。
友達も多く人付き合いを欠かさないし、イベントが好きな純哉だから、きっとその誘いは魅力的だっただろう。
きっと行きたいだろうし、行くに決まってるって、私はちゃんと分かっていた。
それなのに、私は……。
放課後直後の嫌な自分の姿を思い出して、固く閉じた唇の内部で歯を噛み締めた。
するといつしかドアノブを握る手から力が抜けて、カボチャ男――もとい純哉の手によって、二人の間を中途半端に隔てていたドアが開け放される。
そして本来この場にいないと思っていた彼に手を引かれて、私は容易く部屋に引き入れられた。