カボチャ男とハロウィン
カボチャのお面をつけている純哉をきょとんと見上げると、おもむろに手作りのぼこぼこしたカボチャが取り外された。
漆黒の瞳が切なげに細められている表情がお面の下から現れる。その顔は、学校で別れ際に一瞬見せたものと同じだった。
あ、と思った。
こんな表情をしていてほしいと一度期待したはずなのに、いざ実物を見てしまうと、こんな顔をさせたかったんじゃないと急速に後悔の念に包まれる。
目に見えない自分の心が絞られているみたいに痛みを感じた。
それでもまだなお素直に謝ることが出来なくて、純哉から目を逸らすように俯くことしか出来ない。
純哉はそんな私の顔を両手で包み込んでそっと上向かせると、変わらぬ表情のまま泣いているみたいな声で言った。
「……行くわけないじゃん。千菜ちゃんに行かないでって言われたんだから、行くわけないよ」
その言葉にみるみるうちに目に涙の膜が張り、それは堪える間もなく頬へ滑り落ちる。
堰を切ったように流れ始めたそれをすぐに止める術はなく、私はありのままに涙を流したまま、嗚咽の合間にずっと言えずにいた「ごめん」をうわ言のように漏らした。
「ううっ、ごめんなさい……」
「なんで千菜ちゃんが泣くの? 泣かないでよ」
涙をぽろぽろとこぼす私に、純哉が困ったように笑いかける。
私に泣く資格なんてない。そう思うのに、純哉の優しさに刺激された涙腺が壊れたように涙が止まらない。
必死に手のひらで目元を拭っていると、その手が純哉の大きな手に攫われた。
馴染みの温もりに心が安らぐ。意地を張っていた心が緩んでいった。