カボチャ男とハロウィン
『……それは、ちょっと……』
渋るような返事に、期待していた心が打ち砕かれる。
考えないようにしていた現実を目の当たりにしたような気がして、やっぱりそうだよねと、投げやりに思った。
所詮私は、幼馴染み止まりの中途半端な彼女なんだ。友達よりも優先する価値がない、お飾りの彼女でしかないんだ……。
『ち、千菜ちゃん……』
途端、純哉が焦ったような声で私を呼ぶ。もしかすると私は、よっぽど絶望的な顔をしていたのかもしれない。
私は粉々になった心を誤魔化すように、小さく呟いた。
『……純哉なんて、嫌い』
好きなんかじゃない。だから純哉に何を言われたって平気。
傷付いた自分を守るように本当はちっとも思っていないことを口にする私は、それだけで精一杯で。立ち尽くす純哉を放って、その場をあとにした。
そのとき一瞬見えた悲しそうな純哉の表情は、私の勝手な思い込みだと思いながら。
……でもずっと、気にしていた。
嫌いだなんて、思ってもいないことを簡単に言えてしまった自分の無慈悲さを。あの一言で、純哉に嫌な思いをさせていたらどうしようって。
だから、目の前の純哉の温もりに罪悪感を感じながら何度も謝った。
嫌いって言葉も、わがままを言ってしまったことも。
「……ほら千菜ちゃん、もう泣かないで。千菜ちゃんの気持ちはよく分かったから」
めそめそと泣き続けながら謝る私の言葉を、純哉は嫌な顔一つせずに頷きながらすべて受け入れてくれた。