きたない心をキミにあげる。
分離(A)
☆
「圭太ー。どうしたー?」
「え? いや、何も」
ギプスが取れたおかげで学校でのジャージ生活が終わった。
松葉杖は手離せないけど、制服で普通に登校している。
「何だよースマホばっか見て。俺らにもかまえよー」
「や、どのアニメ見よっかなって調べてただけだし」
「嘘だー。お前しょっちゅう誰かとラインしてんべ」
俺は、ふとした時にスマホを確認する癖がついていた。
何も届いていないのを確認し、ちょっと凹む。この繰り返し。
時々、いつもの友達にスマホをチラ見されそうになったり、怪しまれたりしていた。
今は、休み時間。
笑い声や話し声が教室に響いている。
クラスメイト達は教室のいたるところで自由に時を過ごしていた。
退院してすぐの頃は、クラスメイト全員から心配そうな顔を向けられた。
弘樹に憧れていた女子が、落ち込んだ表情をしていた。
しかし、日を追うごとに日常が戻ってきた。
ただ、弘樹が使っていたロッカーは空っぽで、席はもうない。
弘樹がいないことが当たり前になってきている。
本当にこれでいいのだろうか。
そして、愛美は今、どうしているのだろうか。