きたない心をキミにあげる。
行ける場所は1つしかなかった。
そこへ向けて、ひたすら走る。
ごめん、圭太。
また頼らせてもらっていいかな……。
まだ空はうっすらとオレンジ色を帯びていた。
インターホンを押しても誰も出ない。まだ帰ってきていないか。
仕方なくドアの前で膝を抱えてうずくまる。
しばらくすると、
不規則な足音とともに、聞きなれた声が降ってきた。
「あのぅ、愛美……だよね?」
はっと顔を上げる。
学校帰りらしい圭太の姿があった。
制服姿だ。お兄ちゃんが着ていたものと、同じ。
「あ、おかえりー!」
お尻のあたりを叩いて立ち上がり、私は笑顔を向けた。
圭太は松葉杖を片手にしながらも、両足で立っている。
「どしたの? 靴、履いてないけど」
「あ、ちょっとね。急に来てごめん」
「大丈夫? 足、痛くない?」
靴を履かないまま飛び出してしまったため、
黒いハイソックスのかかとのあたりが、砂のせいで茶色くなっていた。
確かに小石を踏んだりしたから、ちょっと痛い。
でも、圭太の右足に比べたらなんてことない。