きたない心をキミにあげる。
「圭太の制服姿、初めて見た。ちょっと雰囲気変わるね」
「そう? ま、どうせいっつもパーカーだからね」
「そうじゃなくて。制服姿、いいね、ってこと」
「は!? とりあえず着替えるから、愛美は足洗ってきなよ」
一緒に圭太の部屋に入ろうとしたが、止められてしまった。
いいねと言われて、照れてる顔が可愛らしい。
もうちょっと制服のままでいてもらいたかったのに。
お風呂場を貸してもらい、靴下を脱いで足を洗う。
圭太に貸してもらった靴下は、くるぶし丈で微妙にセーラー服に似合わない。
「ねー圭太ー。もうちょっと長い靴下ないー?」
ガチャ、と圭太の部屋のドアを開けてみた。
彼はブレザーを脱ぎ、ネクタイを緩めた状態で、
「入ってこないでよ!」とテンパっている。お前は女子か!
棚には大量の漫画や小説が並べられ、女の子のフィギュアがところどころに飾られている。
部屋に入りそれらを眺めていると、大きなため息が聞こえた。
圭太は恥ずかしそうに、ネクタイを締め直してから、黒い靴下を貸してくれた。
「あのさ、出てってくれる?」
「いいじゃん。オタクの部屋とか面白そうだし色々見せてよー」
「俺、足こんなんだから、着替えるのに時間かかるし」
私はベッドにぼふっと腰をかけた。
困った顔をしながらも、圭太は右足を引きずって近づいてきた。
ベッドがふわりと沈む。
彼は少し離れた場所に座った。
ベッドの中央と端っこ。この距離がもどかしかった。