きたない心をキミにあげる。
母が家に帰り、一人になった病室で。
あの女の子は一体何だったんだろう、と考えながら、
目を閉じて眠りにつこうとした。
しかし、扉が開けられる音が聞こえ、目を覚ました。
パタパタパタ! と小走りの音が近づいてくる。
あれ。母さん?
いや、向かってくる影は母よりもやや小さい。
――誰だ!?
「いっ……!!」
つながりかけた俺の体に、勢いよく何かがのしかかる。
その重みによって生じた痛みに、声をあげた瞬間――
首に手が掛けられ、強い力で締め付けられた。
「あんたが死ねばよかったのに……っ!」
聞こえたのは、怒りを帯びた女声。
見えたのは、暗闇の中で揺れるポニーテール。
俺は、弘樹の家の前で見かけた女の子の姿を鮮明に思い出した。
「やめ……っ、くっ」
首に強い力がかけられたまま。次第に息が苦しくなっていく。
負傷している体は、その手を払う力は持ち合わせていない。
声にならない声を絞ることしかできなかった。
――やっぱり弘樹じゃなくて、俺が死ねばよかったのだろうか。
殺されるかもしれない、という恐怖に襲われつつも、
いっそこのまま死んだ方がいいのだろうか、という気持ちも芽生えた。
しかし、頬に生ぬるい何かが次々と降ってきたため、はっと我に返る。
同時に首にかけられた力が緩められた。
これは、涙――?