きたない心をキミにあげる。
「ちょっと何が何だか」
「話はあとで!」
ちょうど近くのバス停にエンジン音が近づいてきた。
愛美はトランクを、俺は松葉杖を抱えて、
手すりにつかまり急いでバスへ飛び乗った。
上下左右に小刻みに揺れるバスは、駅へと向かっている。
これからどうするんだろう、と考えていると、
愛美は、俺のパーカーのすそをつんと引っ張ってきた。
振り返ると、視線を落とした彼女の姿があってドキッとした。
父親におびえていた彼女を安心させたくて、俺はカッコいいセリフを考えていたが。
「ごめん、圭太。次で降りていい?」
「へ、何で?」
「トイレ……行きたい」
消え入りそうな声で、愛美はそうつぶやいた。