きたない心をキミにあげる。
昇華(B)
☆
ガタンガタン、と一定のリズムで電車は揺れる。
ある地方都市を過ぎると一気に車内の人は減った。
休日の夕方の時間がゆっくりと過ぎていく。
山登りの行きか帰りらしいおじいさんおばあさん。
部活用のバッグを床に置いた騒がしい中高生たち。
小さな子どもやベビーカーと一緒に乗って来る夫婦らしき男女。
窓の外にはビニールハウスや畑など、のどかな風景が広がり始めた。
2本に戻った松葉杖で進む圭太を連れて、私はある場所へと向かっていた。
「ねぇ、何でまた足悪くなってるの?」
「や、その。ちょっと転んじゃって」
隣で気まずそうにつぶやく圭太。
あの時、もしかして私を追いかけてくれたのだろうか。
そう思いつつも、
圭太なら本当にやりかねないから、それ以上聞かないでおいた。
その代わり、彼のパーカーの裾をぎゅっと握り、
「あんたバカぁ!?」と伝えると、
メガネ越しにジトーッという音が似合う目を向けられた。