きたない心をキミにあげる。
花束(A)
☆
障子の隙間から差し込んできた朝日がまぶしくて、目を開けた。
「圭太、おはよ」
「うん……おはよう」
くそ。もんもんとしすぎて、マジでほとんど寝れなかった。
人の気も知らないで、すぐすーすーと寝ちゃうし。本当ナマイキなやつ。
旅館の朝ごはんを食べている時、愛美はよく笑っていた。
昨日、もうあの家に帰らない、と言った彼女。
これまで通り、一緒にいれるのは今日が最後なのだろうか。
だったら昨日、思いっきり抱きしめておけばよかった。
涙をこぼしながら、本音を吐き出してくれた様子が、
あまりにも可愛くて、はかなくて、美しくて。
だけど、真逆の2つの感情が俺の中に生じてしまった。
弘樹のことを忘れたくないと言った彼女に対して。
いや、でも……
本当は触りたかった。キス、したかった。
それで――。
って朝から何えろいこと考えてるんだ!?
分厚い財布から万札を出し、旅館のフロントで会計をすませる後姿を眺めながら、再びむらむらとしてしまう。
こら落ち着け、俺!
だって、これから、とうとう行くんだ。
弘樹のお墓に。