きたない心をキミにあげる。
「う……っ!」
俺は愛美の足元――芝生の上にどさりと倒れ込んだ。
急いで顔を上げる。
きれいな涙とともに降ってきたのは、
太陽に反射した金色の光。
それは弘樹の形見、であるはずのブレスレット。
俺は、足の痛みに負けずに右手を伸ばして受け取った。
「ごめんね。ばいばい……っ」
愛美は、袖で目をぬぐいながらそう口にした後、
トランクを引いて、走って俺の前から去っていった。
2本の松葉杖と一緒に芝生に倒れたままの俺。
心と体の痛みによって動くことができない。
手にした金色を握りしめる。
立ち上がりたくなかった。
もっと痛めつけてくれてもよかった。
弘樹……どうしてあの時俺を助けたんだよ。
こんなにも汚い、俺なんかを。
涙があふれ、メガネもずれ、視界がぼやけている。
最後に見た、あいつの悲しそうな笑顔が、
かすんで見えた気がした。