きたない心をキミにあげる。
そして、愛美の誕生日の前日。
澄み切った青空が広がる日だった。
1人で女物の店に入るのを誰かに見られるのが嫌だったため、僕は圭太と買い物に行った。
圭太は俺こういうのよくわかんねーと言いつつも、一緒になって選んでくれた。
結果、女子がまんべんなく好みそうな華奢なブレスレットを購入した。
『なあ、聞いていい?』
『ん?』
『それ、誰に買ったの? とか』
圭太は僕の様子をうかがい、ためらいがちにそう聞いてきた。
普段なら母親や親戚の誕生日プレゼントなどとはぐらかしていたが、色々な感覚がマヒしていたらしい。
僕の機微をよく察してくれる圭太だったからかもしれない。
――誰にも秘密にしてる、大切な人。
そう、彼に伝えた。
なぜ彼女をそのように形容したかは分からない。
ただ、口にすると胸に愛おしさのようなものがこみ上げてきた。
恋愛の類ではないが、きっと愛美に何らかの情が湧いていたのだ。
圭太は横断歩道で口をあんぐりさせたまま、僕を見つめた。
歩行者信号は青。
僕は立ち止まり、彼を振り返る。
『どうしたの。そんな驚いた顔して』
『だってお前、そういうこと話してくれたの初めてじゃん。……なんか嬉しくて』
どくんと鼓動が響く。汚い心が震える。
何も知らないから、簡単にそんなことを言えるのだろうか。
いや、圭太はバカなほどに純粋でいいヤツだ。僕とは正反対の。