きたない心をキミにあげる。
以前彼が僕に問いかけたように、僕も一度彼に聞いたことがある。
『圭太はケンカしないし、変に人をからかったりしない。何でそんな穏やかでいれるの?』と。
『ほら、俺って母子家庭じゃん? 母さんには感謝してるし、片親で苦労させてごめん、とか言わせたくないから。
俺がちゃんとしなきゃなって、ずっと思ってるからかなぁ』
いつか、圭太になら愛美を会わせてもいいと思った。
僕なんかじゃなくて、彼のような人と恋をしてほしいと思った。
『喜んでくれるといいね、そのプレゼント』
何のにごりもない、彼の言葉が僕を再び包み込む。
おれ、いつかお前になら心を開いてもいいのかな。
汚れすぎた心を受け入れてくれるのかな。
そう思った時、車道の信号は赤なのにスピードを落とさず走ってくる乗用車が目に入った。
とっさに僕は圭太を突き飛ばした。
じわりと涙がにじんでいた。
これが、僕が愛美にしてしまった汚いことへの懺悔かは分からない。
分からないままに襲いかかってきた衝撃とともに僕の体は宙を舞っていた。
2人とも、僕の真実を知らないまま、きれいに生きてほしい。
最後に、そう思った。