きたない心をキミにあげる。
もともと勉強はできないから、
2年生にはなれても3年生にはなれないと思っていた。
だけど、時々勉強を教えてくれた人たちを思い出してしまい、その度に胸がちくりと痛んだ。
ただ、時々襲われる寂しさや不安は、忙しさがかき消してくれた。
「いらっしゃいませ。それ新作なんですよー。よかったら広げて見てみてください」
二コリとお客さんに笑いかけると、ちらっと私を見て、控えめながらも微笑みを返してくれる。
「やっば、さっきの店員さん超可愛くなかった?」
「うちもああいうメイクとか服とかしたーい」
そんな声が聞こえてくると嬉しくなった。
1時間の休憩をはさみ1日8時間勤務。土日は休みじゃない。
給料も高いとはいえないけど、高校生をやっていた時よりも確実にお金は稼ぐことができていた。
「俺、ファンっす! 友達からでいいんでお願いしまっす!」
「うわーあいつマジで行ったー」「すげぇー」
男のお客さんからよくライン交換を迫られたり、ナンパもされたりする。
「あはは。気持ちは嬉しいんですけどごめんなさいっ。あ、よかったら店のライン登録してくださいねー」
基本的には笑顔でそう返しておいた。
しつこい場合はすぐ店長にチクるようにした。
家まで着いてこられそうな時は、お父さんに迎えにきてもらった。
ちょっと好みかも、と思う人もいたけど、
男の子からの誘いは全部断っていた。