きたない心をキミにあげる。
☆
「ただいまー」
「……おかえり」
仕事終わりのある日。
家に帰ると、落ち込んだ声のお父さんに迎えられた。
スーパーの袋から食材を出しながら、
「どしたの? 面接結果出た?」と尋ねてみる。
「不採用通知来た……。もう何社目だよ」
と言って、お父さんはワンカップのお酒のフタを開けた。
まさか面接落ちて、凹んで、また――
私は、ギロリとお父さんをにらみつけた。
すると、「いやいや、お金はある!」と慌てて財布を見せてくれた。
「よく頑張りました。遅くなったけど今からご飯作るねー。今日はハンバーグだよ。お肉安かったから食べて元気出しなよ」
「そうかぁ。ありがとう。……はぁ、愛美には苦労かけてばっかりだ」
「別にいいよ。たぶんお父さんが正社員になった頃には、メガネのオタクの王子様が迎えに来てくれるから」
「へい? なんだそれ?」
「それより、余ってる切手あったら1枚ちょうだい。履歴書用のやつあるでしょ?」
「ん? 引き出しの上あるから使っていいよ」
お父さんはお父さんなりに頑張ってる。それが嬉しかった。
あいつもあいつなりに頑張ってるのかな。