きたない心をキミにあげる。
受容(A)
☆
「あの、私と付き合ってくれませんか?」
高校3年生の秋。
俺は同じクラスの女子に告白をされ、ビビっていた。
「え、ええっ!? 俺と? その、あの……これ、罰ゲームとかじゃないよね?」
「違うよ。圭太くんが好きだから告ってるんじゃん!」
トランペットやクラリネットの音が聞こえる、夕方の非常階段で。
目の前でその女子に怒られてしまい、「ご、ごめん!」と勢いよく謝る俺。
「足痛そうなのに、体育祭で頑張ってたとことか、落とした消しゴム拾ってくれたりとか、その……気づいたら圭太くんのこと目で追ってて
……って、こんなこと言わせないでよ! 恥ずかしい!」
いやいや、自分から言って更にキレないでくださいよぉ。
と、おろおろしつつも、俺はしっかりとメガネ越しに彼女を見据えた。
「ごめん。俺、好きな人いるから」
「そっか……。じゃあ、ダメだよね……。そうなんだ。……うっ。あれ、ごめん、何で泣いてるんだろう、私……」
えええ!? 泣いちゃうの?
どどどどうしよう。これって、俺が泣かせちゃったやつ!?
「ごめん。うわぁ、本当にごめんね!」
「バカ! そんなにあやまらないでよ! もういいっ!!」
パタパタとズックの音を鳴らし、その子は去っていった。
目の前の出来事についていけず、カラスの鳴き声をバックにぽかーんとたたずんでいた。
すると、
「圭太くーん。聞いちゃったよ。見ちゃったよ」
「リアル女子泣かせるなんて、ホント悪い男っすねぇ」
と後ろからいつもの友達2人の声がした。