きたない心をキミにあげる。



「じゃあ。俺、行くね」



そう言って、水越圭太はクロックスを履いた左足を地面につけた後、松葉杖に体重を乗せた。


重たそうな右足を宙を浮かせたまま、ゆっくりと前進する。



私の横を通り過ぎようとした時、


「どうやってここまで来たの?」


と、思わず彼に尋ねた。



「電車」


「足、そんなんなのに?」


「うん。休み休み来たから時間かかったけど。下校時間に間に合ってよかった」



ふぅ、と軽く息を吐きながら、彼はそう答える。


少し動くだけで、かなりの体力を消耗するらしい。



「大変だったでしょ」


「でも早く届けなきゃいけないと思って」


「ば、バカじゃないの? 私の家に届けにくればよかったじゃん」



私の家と彼の入院先がある街から、ここまでは電車で1時間以上かかる。


今から帰れば帰宅ラッシュに遭遇してしまうだろう。



< 25 / 227 >

この作品をシェア

pagetop