きたない心をキミにあげる。
「じゃあ。俺、行くね」
そう言って、水越圭太はクロックスを履いた左足を地面につけた後、松葉杖に体重を乗せた。
重たそうな右足を宙を浮かせたまま、ゆっくりと前進する。
私の横を通り過ぎようとした時、
「どうやってここまで来たの?」
と、思わず彼に尋ねた。
「電車」
「足、そんなんなのに?」
「うん。休み休み来たから時間かかったけど。下校時間に間に合ってよかった」
ふぅ、と軽く息を吐きながら、彼はそう答える。
少し動くだけで、かなりの体力を消耗するらしい。
「大変だったでしょ」
「でも早く届けなきゃいけないと思って」
「ば、バカじゃないの? 私の家に届けにくればよかったじゃん」
私の家と彼の入院先がある街から、ここまでは電車で1時間以上かかる。
今から帰れば帰宅ラッシュに遭遇してしまうだろう。