きたない心をキミにあげる。
「だって、きみが弘樹の妹さんっていう確信が無かったから。制服が一番の手がかりだったし」
「制服?」
「うん、友達にそういうの詳しい人がいて。紺のセーラー服で赤リボンで、袖に三本線っていったら、ここしかないって」
「……え」
「あ! その、別に、きみのそういうとこばっか見てたんじゃなくて。何となく覚えていただけだから! あと、そのポニーテールも……って、別にそういうとこばっか見てたわけじゃくて、その」
私が驚いている間に、水越圭太は頬を赤く染め、1人で慌てている。
何1人でテンパってるんだ、こいつは?
わざわざそんなこと言い訳しなくてもいいのに。
まあ、私が誰で、どこにいるか、懸命に考えてくれたんだろうな。
彼に対して抱いていた嫌悪感や緊張感がほどけていく。
「今から電車すごい混むし、危ないよ」
「そうなの? じゃあどっかで時間つぶすしかないかなぁ」
「方向一緒だし、帰り私がついてくよ。誰かがぶつかりそうになったらガードするから」
「え? さっき友達と一緒だったじゃん」
「大丈夫だよ。後で連絡しとくし」
「でも……」
さっさと言うこと聞けばいいのに。
私が足を進めても、彼は松葉杖を両脇につっ立ったまま。
灰色の雲の奥にあるオレンジ色を眺める。
彼に対しては複雑な思いを抱いている。
だけど、わざわざ届けに来てもらったことに感謝はしていた。