きたない心をキミにあげる。
☆
「いつ頃退院できそうなの?」
「あと1週間くらい。しばらく学校は行けないけど」
「ふーん」
暗くなる空の下、点状に光を放つマンション群が遠ざかっていく。
どうしてこいつと一緒に電車に乗っているんだろう。
そう思いつつも、水越圭太が座っている優先座席の前に人が押し寄せないよう、吊り革を強く握った。
右腕には、お兄ちゃんが買ってくれた金色のブレスレットがある。
窓の外の景色を背景にそれを眺めていると、
ガタンと電車が大きく揺れ、ふらりと足がよろけた。
「つっ」
「大丈夫? ごめん」
水越圭太は長いギプスをしていて膝が軽くしか曲げられない。
その白に、預かった松葉杖をぶつけてしまった。
「ん、大丈夫。それより、こっちこそごめん。立ちっぱなし疲れるでしょ」
片目をつぶりながらも、水越圭太は申し訳なさそうな表情を浮かべた。
こいつが私に気を遣いまくりなのは、お兄ちゃんとの件があるからだろうか。
それとも素?
どちらにせよ、こいつはお兄ちゃんが一番心を開いていた友達なのかもしれない。
だって、私へのプレゼントを買う時に一緒にいたから。
お兄ちゃんは私との関係を外に匂わせるようなことは、絶対にしないはずだ。