きたない心をキミにあげる。
そのまま病院前まで水越圭太を送ることにした。
ブレスレットを届けにきてくれた手前、どこかで一人転ばれてケガを悪化させでもしたら申し訳ない。
もちろん家に早く帰りたくなかったのもある。
「ここまでわざわざごめん。ありがとう」
「いいよ。別に今日バイト休みだし、ヒマだし」
一緒に県道沿いの横断歩道を渡り、市内で一番大きな病院へ。
それにしても駅から近い病院で良かった。
「じゃあね。これ、ありがと」
そう言って、私は右腕を挙げながら彼と別れようとした。
ここの歩行者信号は、一度赤になるとかなり待つハメになる。
青であるうちに横断歩道を渡りたかった。
しかし――
「待って!!」
慌てたような大声が聞こえ、急にセーラー服の後ろ襟を掴まれた。
バタン、バタン、と松葉杖がアスファルトに倒れる音が2本分鳴る。
「え?」
「痛っ!」
水越圭太は私の肩にもたれかかってきた。
右足のギプスを地面につけてしまったらしく、左足でケンケンをして転ばないよう踏ん張っている。
私は急いで振り返り、彼の腕の下に首を通して、その体を支えた。
男の子一人分の体重が全身にのしかかる。
パーカー越しに彼の体温を感じた。
冷たくなったお兄ちゃんとは逆。こいつは生きている。