きたない心をキミにあげる。
目の前で水越圭太は小刻みに息を吸って吐いている。
何かを思い出したのか。それとも何かを思い詰めているのか。
ごくり、と自然に喉が鳴る。
私は恨みを持つ相手を間違えていた。
こいつも悲惨な交通事故の被害者であり、かつ、目の前でお兄ちゃんが死ぬところを目撃したのだ。
友達が死ぬ瞬間を見て、自分も生死をさまよった。
傷ついているのは体だけじゃない。
きっと心も。
「……この前は、ごめん」
「え」
「あんたが死ねばよかったのに、って言ったの謝る。別に死ななくていいから」
「…………」
水越圭太は顔をあげ、メガネ越しに私をしっかりと見据えた。
「あの時はちょっと感情的になった。本当ごめん。まあ、謝って許されることじゃないと思うけど」
私は、彼との間にある壁に隙間を空けることにした。
首を絞めてしまったこと、いつかは謝ろうと思っていたし。