きたない心をキミにあげる。
そういえば、夏頃だったっけ。
ちょっとはモテたいと思った俺は、メガネをメタルフレームから黒縁のものに替えた。
『お前、メガネ買いかえたべ?』
『うわーオタ卒業っすか? オシャメガ野郎!』
『うるせーな。いーじゃん別に!』
雑誌で見たメガネ男子特集に影響されて買ったもの。
だからか、初めて披露した時はちょっと恥ずかしかった。
友達はすぐさまいじってきたが、弘樹だけは違った。
『へー。似合ってるじゃん』
さらりと髪の毛を揺らし、濁りのない目を俺に向けてきた。
あいつはいつもそうだった。
変にふざけたり、茶化したりすることはない。
一度だけ聞いたことがある。
お前、いつもそんないい子でいて疲れない? と。
『別にいい子じゃないよ。圭太の方がいいヤツじゃん』
彼は視線をそらし、そう微笑んだだけだった。