きたない心をキミにあげる。
弘樹はくだらない話も、ぐちぐちした話も、気に入ったアニメの話も、いつも嫌な顔一つせず聞いてくれた。
ちょっと気になる女子に彼氏ができた時には、
『圭太ならすぐいい彼女できるって』と慰めてくれた。
ただ、俺は弘樹の何を知っていたのだろう。
よくつるんではいたけど、どこかいつも彼は遠いところにいた気がする。
やっと一つだけ深い部分を知ることができたのは、彼がいなくなる直前だった。
誰にも秘密にしてる、大切な人。
それが、彼の妹、佐藤愛美だったこと。
『私が知らないお兄ちゃんのこと、いつか教えてほしいな』
俺も、俺が知らない弘樹のこと、佐藤愛美から聞きたい。
だって、俺は一生背負って生きていかなければならない。
佐藤弘樹が確かにこの世界に生きていたことを。