きたない心をキミにあげる。
☆
あの日、俺は友達の弘樹と一緒に西区のショッピング街にいた。
『うわ、男2人でこういうとこいるの変じゃね?』
『まあね。あ、圭太。これどう思う?』
『んー。何かクラスの女子がつけてそう』
そんなやりとりをしながら、
女の子向けの雑貨屋で、弘樹のアクセサリー選びに付き合った。
今まで彼女がいたことがない俺は、
『そういうの、今女子高生の間で話題ってテレビでやってたよ』
というような、微妙なアドバイスしかできなかった。
弘樹は今年同じクラスになった友達。
ヘボい俺なんかと違い、男前でいいヤツ。
顔もそれなりに整っているし、まとう空気は時々色っぽさを帯びていた。
もちろんモテる。
だけど、女子からの告白は全て断っていた。
男が好きなんじゃないか疑惑もあったため、
先日、友達の1人が直撃したが、
『違うって。別に今、彼女はいらないだけ』
と言って、弘樹は軽く笑うだけだった。
しかし、その笑顔は心からのものではなく、
固いバリアを張ったままに浮かべたもの。
――これ以上、踏み込んでこないでほしい。
弘樹のそんな意志が伝わってきたため、
『くぅ~、俺もそんなセリフ言ってみてぇ~』と俺がおちゃらけて、会話を終わらせた。