きたない心をキミにあげる。
夜9時。少しずつ駅前から人が減っていく。
ロータリーでは、大きな黒い車がエンジン音をうるさく鳴らしている。
広場の奥には、派手な若者がたまっていた。
目が合ったら声かけられそうだな。
セーラー服に、足元はお母さんが近所用に使っているサンダル。
しかも、ずっとここに座りっぱなし。絶対訳ありだって思われる。
誰か泊めてくれればありがたいけど、チャラそうな軍団だし関わりたくないかも。
誰とも視線を合わせないよう、足元のサンダルを見ると、
「あのぅ」
という弱々しい声が降ってきて、びくっと体が震えた。
聞き覚えのある声。急いで顔をあげる。
「な、んで……?」
そこにいたのは、グレーのパーカーを羽織った、黒縁メガネの男の子。
もちろん右足は真っ白なギプスで固められたまま。
松葉杖に体重を乗せ、不規則なリズムで私に近づいてくる。