きたない心をキミにあげる。
贖罪(A)
☆
俺の家から駅まで徒歩15分くらい。
でも、今の俺だといつもより倍の体力が必要になる。
「次の角、右でお願いします」
駅前通りを抜け、静かな住宅街に入った。
対向車のライトにより、無言のままの佐藤愛美が照らし出される。
彼女はポニーテールの先っぽを背もたれに乗せ、窓の外を見ていた。
「あ、その奥のマンション前で止めてください」
どうして俺は佐藤愛美とタクシーに乗っているのだろう。
女の子を家に連れ帰る、という行為自体が初めて。
しかも、彼女は死んでしまった弘樹の妹だ。
『ねぇ、お兄ちゃんのことで罪悪感持ってるんだったら、私のこと助けてくれない?』
――助けて、って、どういうことだ?