きたない心をキミにあげる。
次の日の朝、愛美は帰っていった。
「ねえ、あの子、手首に傷あったよ。料理手伝ってもらった時に見えた」
スーツのジャケットをはおりながら、母はそう口にした。
「え。まじ?」
「ちゃんと見ててあげた方がいいかもね。お兄さんが急に亡くなってショック受けてるでしょう、きっと。……ほら、学校行くよ」
車のキーを片手に、母は玄関へ向かう。
俺は松葉杖を両手にして、ケンケンでその後姿を追いかけた。
母に車で高校に送ってもらう途中、愛美にラインを送った。
『母さんもまた家おいでって言ってたよ』
『そっか、良かった』
『弘樹のいない家にいるのが辛かったら、いつでも来ていいから』
『いいよ。あんたなら襲われなさそうだし、一緒にいても安心だ』
『まあ。足折れてるからね』
『あはは。そういう意味じゃないよ。性格的にってこと』
――はい?
そのメッセージの後、『あんたバカぁ!?』と言っているアニメキャラのスタンプがぽんと画面に浮かび上がった。
ちょ、何だよこれ!
やっぱり俺、からかわれてる?
弘樹……お前の妹、お前と違って結構ナマイキだぞ。