きたない心をキミにあげる。
私も、お父さんも、彼に視線を向けた。
「どうしたの圭太くん。家族の問題に首を突っ込まないでくれないかな?」
ニコッと表面的な笑顔を浮かべ、お父さんはなめらかに言葉を発する。
圭太は気まずそうな表情になった。
こいつ、バカだなぁ。
そういうキャラじゃないのに無理しちゃって……。
でも、彼が歯向かってくれたおかげで、心が救われた気がした。
圭太……もういいよ、と言いかけたが。
彼は私とお父さんをしっかり見据えて、続けた。
「や……でも。俺が言うのも変かもしれないですが。何かおかしくないですか? 愛美さん、めちゃくちゃ嫌がってるように見えるんですけど」
その言葉にお父さんの力が一瞬ゆるんだ。
近くを通る人たちが、興味深そうな目で私たちを見ている。
「愛美ちゃんは今、反抗期だからね。それとも、夜遅く帰る娘を親が心配するのは悪いことかな?」
「いや、その……えっと」
圭太は松葉杖の位置をずらしながら、言葉を詰まらせていた。
きっと、疑問に思ったことをぶつけたものの、
父に論点をずらされたせいで、どう返したらいいか分からないんだ。
彼は、私の家の事情を知らないから。
でも、圭太がこんなにも頑張ってくれたことが嬉しかった。
だったら私も、負けない。