きたない心をキミにあげる。
聞くと、愛美の母と弘樹の父は半年前に結婚したばかり。
2人とも離婚歴があり、再婚同士らしい。
愛美は、本当のお父さんと小学生の頃に離れ離れになったが、
時々連絡をしたり、会ったりしているとのこと。
右足を動かさないように手を伸ばし、俺は麦茶を一口飲んだ。
ごく、と喉が不自然に鳴る。
「えっと、じゃあ弘樹は……」
「血つながってないよ」
「そっか。そうだったんだ」
噛みしめるようにつぶやく。
弘樹と愛美の関係が少しずつ線になっていく。
俺と弘樹が同じクラスになったのは今年の4月。
弘樹は、俺と知り合った後に、愛美と母親と家族になったんだ。
全然知らなかった。
彼はそんなそぶりを一切見せなかった。
愛美はポニーテールのおくれ毛を耳にかけた。
右腕の袖が落ち、キラリとあの金色が光る。
聞いていいのか分からなかった。
だけど、ちゃんと知りたいと思った。
弘樹のことも。愛美のことも。
「弘樹のこと、好きだったの?」
布団がごそごそと鳴る音が聞こえる。
愛美は座ったままぎゅっと布団を抱きしめ、うん、とうなずいてから。
「大好きだったよ。家族って意味じゃなくて普通に」
と落ち着いた声で続けた。