きたない心をキミにあげる。
愛美が俺にもたれかかってきた。
肩と肩。触れている部分に意識が集中する。
少しずつ帯びていく温かさが、体に染み込んでいくようだった。
弘樹が死んで、どれほど愛美は悲しんだのだろう。
俺を殺したくなるくらいに憎むほど。
そして、左腕に赤い傷をつけてしまうほどに。
「圭太はいい人だね」
「別にそんなんじゃないって」
「本当、優しすぎてムカつく」
「え。なにそれ」
いいことを言われているわけじゃないのに、笑いそうになる。
彼女がちゃんと寄りかかれるよう、姿勢を変えないままで。
愛美は細い指で目尻をなぞっている。
泣いているのだろうか。
と思ったが。
「でも気ぃきかないよね。こういう時普通は頭なでたり、ぎゅって抱きしめたりするもんだと思うけど?」
とバカにしたような口調で言ってきた。
「え!?」
――はい?
頭なでる? 抱きしめる? 愛美を?
ばくばくと激しい鼓動が鳴ってしまう。
シャンプーの甘い香りが漂っていることにも気がつき、俺は1人で視線を泳がせていた。