きたない心をキミにあげる。









いつの頃だろうか。


セピア色で昔の光景がよみがえる。



『何で、死んだのよぉ……ううぅ……う』



カラン、と空になったお酒の缶が床に落ちて転がる。



食卓にも空になったビンと缶がミニチュアの街のように並べられていた。



その奥にあるのは、泣きながら机に突っ伏す母の姿。


服装は、真黒なジャケットとスーツのまま。



『どうして、どうしてぇ! うぅ……ぐすっ』


『母さん』



俺は転がった缶をよけ、母のもとへ向かっていた。



『…………』


『ぼくがいるよ』


『……え』


『ぼくが母さんのそばにいるから』


『う……圭太……圭太ぁー!』



ガタンと、椅子を倒してから。


母は幼い俺に駆け寄り、強く強く抱きしめてきた。



涙によって服の肩の部分が湿っていく。


俺は息ができないほどきつく、母に包み込まれていた。


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